Mate

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両者が一歩も譲らない状況の中、鷹堂は阿朱里を二人から離し、開放された窓辺に連れて行った。 「首長である澁澤が言うことの全ては事実だが、お前は本来の体調を取り戻してはいない上ロイヤルオメガと決まったわけでもない。 現在置かれている環境に苦痛を感じ、ここにいるのが嫌と言うならば、この俺が首をかけてでも自由にしてやる。 だから今は何も考えず自身の回復に努めることだ」 窓の外に並ぶ木立の向こうにある光の揺らめきを見つけ、 「ここは都心に近い場所だが、古くからある敷地は建物以外の手が加えられてない。 木立の向こうには泳げるほどの湧水泉もある。 もう少し気温が上がったらお前をそこに案内してやろう」 明るい日差しを越して鷹堂が指さす向こうに、一旦は興味を見せた阿朱里だが、すぐにその表情は硬くなった。 また華奢な身体からは保護以来、孤独に対する不安や寂しさのようなオーラを微かに感じ続けていたが、リクという子のビデオを見てからはそれらも閉じられていた。 「ここは、、、 ロイヤルオメガが使う部屋なのか?」 阿朱里は窓から身体の向きを変え、 改めて部屋を見回した。 華美ではなかったが、阿朱里がこれまで潜んでいた地下牢とは比べようもない。 「いや、候補にあがった者が認定を受けるまでの間、一時的に使用するだけだ。 お前が正式にロイヤルオメガとなれば、この棟の奥にある専用の部屋で儀式までを過ごす事になる。 もし認定から外れ、資格がないと判断されればここから数キロ離れた仲間のいる管理局が管轄するセンターに移されるだろう」 「、、、、」 あの日に見たロイヤルオメガも阿朱里と同じように、ここで澁澤らから、 『仲間の為に犠牲となる運命』を告げられたのだろうか。 それを受け入れた結果、オメガ最下位のヒエラルキーを変化させているということなのか。 全ての仲間達を『地下牢』から地上へ導く為に。 「アシュリ?」 鷹堂に名を呼ばれた時には、阿朱里の心内で一つの信念が濁ることなく覚悟となり、それは揺るぎないものへと変わりつつあった。 「俺は、、、 ハクやアキラの死を無駄にしたくない」 突然はっきりした言葉を響かせた阿朱里を、澁澤と前園が揃って見つめた。
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