Mate

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「よく言った、アシュリ」 「アシュリ君!」 「俺がロイヤルオメガになって、 法律を作ったり変えたりできる上位アルファと番えば仲間の将来が守られるんだろ?  もう二度と、格差も差別も虐待も失われる命も無くなるとお前たちも約束してくれるのか?」 真剣な面持ちで訊いた。 「約束できる、必ずだ」 大股で近づく澁澤の後を前園も追った。 「一度ロイヤルオメガと認定されてしまったら撤回はできないんだぞ、アシュリ君」 「かまわない」 「今現在、もしも君にメイトがいたとしても、番うことが叶わなくなる。 それもわかってるのか?」 「わかってる」 「では問題ないな。 アシュリ、実はお前をここへ連れてきた段階でメイトの存在が判明している。 どこの誰かを知らせる義務は我々にはない。 だから言えるのはここまでだが、その者にはメイトであるお前とは一生番えないことを了承してもらおう」 阿朱里の言葉を受け、澁澤が事実の一部のみを伝えた。 「、、、、」 それでも阿朱里の目にある光は変わらなかった。 鷹堂には阿朱里の決意が、メイトの存在を知らされた所で翻ることはないとわかっていた。 それでも阿朱里に対する情愛は出会ってから日々膨らんでおり、膝を折って目線を合わせ、言葉を切りながら慎重に訊いた。 「本当に知りたくはないのか? アシュリ。 お前の魂の番(メイト)が、どこの、どいつなのか」 長い沈黙があった。 が、次に阿朱里が口を開いた時には迷いのない顔を上げ、はっきりと言った。 「知りたくはない。 俺がロイヤルオメガになるとしたら、メイトがいてもいなくてももう意味のないことだ。 だったらむしろ知らない方がいい」 何の躊躇いもなく鷹堂に向かって即答した。 「確かにな。 メイトなど『知らずに』生きる方が、 ロイヤルオメガになった者にとっては幸せだろう」 口を挟んだ澁澤はスーツの胸ポケットからスマホを取り出し自局の職員に指示を送った。 「認定審査会に審査の申し入れをしろ。日程は最短で調整だ」 そして再び阿朱里に向き合うと満足そうに顔を上げた。 「1ヶ月後を目処に司法省の白波瀬(しらはせ)と顔合わせまで漕ぎつける。 お前を磨き上げて鼻持ちならないエリートアルファの胆を抜いてやる」
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