ロイヤルオメガ

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ホールではこれから一通りの儀式が執り行われるはずだったが、ロイヤルオメガはその手前で番となる最高位のアルファから出迎えられ、先に挨拶を受けている。 阿朱里は目を凝らしてロイヤルオメガの番となったアルファを見た。 ー ああ、やっぱり何もかもが違う。 スーツの中で張る筋肉質で大柄な肉体は、どのアルファとも変わりはない。 が、遠くを見捉えるような眼には天が割れても動じない覚悟がある。 何よりも、 周りを囲む御付きのアルファより雄味(おすみ)が強い。 上品と言うよりは力強く、厳かな顔立ちと立ち振舞いには音のない声が聞こえ、それらが見えないオーラとなって周囲は自然と奴の動きに流され、無意識なのだろうが規律性をもって付き従がっている。 「へぇ」 ー あいつは統率の血を(たぎ)らせる本物のリーダーだ。 初めて見る上位アルファの存在感に阿朱里は思わず感心の笑みをこぼした。 一方、 一度(ひとたび)(つがい)の発情フェロモンにあてられれば、あんな凄いアルファも、理性などでは歯止めが効かないほどの性欲に衝かれ、華奢なロイヤルオメガを乱暴に組み敷いてしまうんだろうか、とも考えた。 何の感情もなく獣のように腰を振り、快楽だけを搾り取った後は大量の精液を放出して妊娠させるだけなんだろうか、と。 阿朱里の笑みはすぐに消えた。 長い挨拶をただ佇んで聞いているロイヤルオメガに、少しも喜びや希望の色が見えないのは、彼もまた阿朱里と同じ気持ちでいるからなのだろう。 屋上の縁に組んだ腕を乗せ、その上に顎を置いたリクが恨めしそうに呟いた。 「『ロイヤルオメガと目が合えば、その者は幸せになれる』、、、か。 俺達を蔑んでるクセに、絶滅寸前になりゃ顔かたち良いの選んで神サマ扱いかよ。 だったらオメガ全員を神にしろっての。 もう(はら)いっぱい。 、、、人が散る前に帰ろうぜ、アシュリ」 くるりと背を向け階段に続く扉へ向かった。 阿朱里にはリクのやりきれない心情が痛いほど理解できた。
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