ロイヤルオメガ

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ロイヤルオメガの側に立つ、その男がアルファであるのは紛れもなかった。 まるで近距離から声でもかけられたかのような反応で顔を上げ、上階から見下ろす阿朱里(アシュリ)に視線を合わせて来たのだ。 「うわ」 咄嗟に身を引き、 「どうしたんだよ」 腰を上げかけたリクの腕を掴んで退かし、扉を開けて階下へ走った。 「アシュリ?」 「見られた」 階段、踊場、また階段と駆け抜け、テナントの入っていない階でフロアを突っ切ると、業務用階段に移って再び駆け降りた。 地上から十階を切ったあたりで外階段へ出、隣接する低層ビルの屋上めがけて飛ぶ。 リクもまた弾かれたように俊敏な動きで後に続いた。 ハアハアと繋ぐ息の合間で、 「見られた、って、、、ロイヤルオメガに?」 安心させてくれよと言わんばかりのリクに、 「オメガに付き添ってた、、、アルファ」 むせ返る息と共に声を吐き出した。 「、、、お前はアルファ並みに目がいいからな。 こっちも気づいて良かった。 手ぇ回される前に潜ろうぜ」 そこからは、人目を避けるようにビルからビルへと渡り走り、劇場裏に繋がる地下鉄の換気口までたどり着いた。 「大丈夫かな」 膝に手を着き、首をねじってリクに訊くと、 「発情期を迎えてない俺たちの匂いは微量だって言うし」 リクは左右の腕に鼻をあてながら、 『大丈夫だろ』 と言って薄暗い地下通路を歩き出した。
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