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「ねぇよっくん? 時間を停められることができたら何をしたいっすか?」
幼馴染であり、この科学部の部長でもある槞彩江は不意に俺に向かって問うてきた。唐突な質問ではあるが、文庫本を片手に考えてみる。
時間を停めることができたらやりたいことなど、ぱっと思いつくのは一つしかなかった。この学校の女子更衣室へと侵入して、あんなことやこんなことの限りを尽くす。思春期の高校生男子の溢れるパッションを曝け出すこと以外、思い浮かばなかった。
無論そんなことを口にすれば、いくら恥ずかしいことの全てを把握しあっている幼馴染と言えどドン引きは免れなく、縁さえ切られる可能性がある。なので、丁寧に選び抜いた回答を口にした。
「電車に乗り遅れそうな時とか、テストの時とかに使いたいな」
「はい、不正解」
どうやら、口にするまでもなく本心はバレているようだった。なら、なぜ訊いてきたのだ。
「実は、時間を停めることのできるコンタクトレンズを発明したっす」
「うぇ、ちょ、おい、とうとうやり遂げたのか? 全国の男性が歓喜するぞ。お前は新たな神にでもなるつもりなのか!? どうか、私めにお慈悲を!」
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