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彩江の注意事項を聞きながら、コンタクトを目に入れる。彩江とは違い健やかに育ったおかげで、視力は裸眼で両目とも1.0ある。度は入っていないようで、見え方が変わることはなかったが、目の中に物が入っている違和感は拭えなかった。
「どうっすか? 見え方の違和感、身体の調子。吐き気や頭痛等はありませんか?」
「あれ、なんか今日の俺格好よくない?」
「くそっ、致命的な欠陥があるようっす」
「どういう意味だよ。さて、冗談はこれくらいにして始めていいか?」
「はい。ちゃんと、ウチの方を見てくださいよ?」
念を押す彩江。よくわからないが、とりあえず言われた通り彩江を視界に入れて唱えようとする。
その時だった。不意に、二人きりの科学室の扉が勢いよく開かれた。普段から来客など皆無なので、揃って慌てながら扉の方を向くとそこには一人の男が立っていた。
角刈りの短髪と、鋭い目つきに太い眉。丸太のような腕に、高い身長と分厚い体躯が圧倒的な威圧感を演出している。風格は教師にも引けを取らないが、着ている制服と学年毎に色分けされた上履きから三年生であることがわかった。
男は、俺の奥へと視線を向けると大股でこちらへと近付いてきた。
「見つけたぞい。我が姫よ。今日も変わらず愛らしい。儂と交際をしてほしいぞい」
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