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蓮華と蜂蜜
猫を拾った。
真っ黒で、小さくて、汚れた猫。
その猫の目は深い碧と奥の方で綺麗なグリーンが混ざった色をしていて、彼女の目は僕を虜にした。
僕はその猫になぜか親近感を覚えた。
一人ぼっちでいきる僕と、どことなく匂いが似ていたから。
僕はその黒猫を大事に大事に育てた。
部屋を散歩させた。外には出さなかった。
猫は猫なのに蓮華の蜂蜜漬けを好んだ。
僕は彼女といる時間が大好きだった。
首に赤い首飾りと綺麗な鈴を着けた。
彼女は時々僕が仕事に行くとき、どこからか抜け出していなくなっていた。
どこに行っていたか気になったし、嫉妬したが、どこから抜け出しているかわからなかったので、どうしよもできなかった。
ある時から僕は、彼女に美味しい蓮華の蜂蜜漬けをあげることに夢中になった。
そのために綺麗な蓮華を探し、遠くまで蜂蜜を買いにいかなければならなかった。
その日は特別な日になるはずだった。
猫を拾って一年になるからだ。
だがしかし、その日に猫はいなくなり、家に帰ってこなくなった。
僕はどうしても最高の蓮華漬けを作らなくてはと思った。
どうしても彼女に帰ってきて欲しかった。
一週間たって、いつもは出掛けない町の外れまで買い物に出掛けた。
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