蓮華と蜂蜜

1/2
前へ
/2ページ
次へ

蓮華と蜂蜜

猫を拾った。 真っ黒で、小さくて、汚れた猫。 その猫の目は深い碧と奥の方で綺麗なグリーンが混ざった色をしていて、彼女の目は僕を虜にした。 僕はその猫になぜか親近感を覚えた。 一人ぼっちでいきる僕と、どことなく匂いが似ていたから。 僕はその黒猫を大事に大事に育てた。 部屋を散歩させた。外には出さなかった。 猫は猫なのに蓮華の蜂蜜漬けを好んだ。 僕は彼女といる時間が大好きだった。 首に赤い首飾りと綺麗な鈴を着けた。 彼女は時々僕が仕事に行くとき、どこからか抜け出していなくなっていた。 どこに行っていたか気になったし、嫉妬したが、どこから抜け出しているかわからなかったので、どうしよもできなかった。 ある時から僕は、彼女に美味しい蓮華の蜂蜜漬けをあげることに夢中になった。 そのために綺麗な蓮華を探し、遠くまで蜂蜜を買いにいかなければならなかった。 その日は特別な日になるはずだった。 猫を拾って一年になるからだ。 だがしかし、その日に猫はいなくなり、家に帰ってこなくなった。 僕はどうしても最高の蓮華漬けを作らなくてはと思った。 どうしても彼女に帰ってきて欲しかった。 一週間たって、いつもは出掛けない町の外れまで買い物に出掛けた。     
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加