3910人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「どうして、離婚…したの、とか、聞いてもいいの?」
「ん…」
周は温かい缶コーヒーを、開けるでもなく、両手で包み込んでいる。
「考え方のすれ違い…かなぁ。子供が欲しい、と言われたんだよね。まあ、いつかは…とか思ってはいたけど、向こうがそれに取り憑かれたようになってしまって…。怖くてさ…。そこまで、俺が追い詰めた、のかもしれないし、分かんない。」
ぽつん、ぽつん…と話し出す。
いつも、こんな仕事をした、とか、こんな付き合いがある、とか俺様な話しかしなかったので、その姿はとても意外だった。
「そしたら、逆に…抱けなくなっちゃったんだよね…。どんどん、すれ違いが大きくなっていって、もう無理かもって思っていたら、向こうから、別れたいって言われた。」
こっちが無理って思っている時は、向こうも無理って思っているのかな。
そう言って、苦笑する。
「素直に、判子ついたよ。で、異動願いを出したら、まあ、本社のポストに空きが出たので、タイミングよく、戻してもらった。したら、無性に、上総に会いたくなってしまったんだよな。」
本当に今まで見たことないような、自嘲するような笑み。
「俺、本当に去るものは追わないんだよ。けど、会いたかったんだ。上総に。」
上総も口を開く。
最初のコメントを投稿しよう!