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ソフトを立ち上げて、ソースを見るともなく見ていると、バスルームから出てきた上総が、私も一服させて、と言う。
「ん。」
灰皿と付け替え用の煙草を差し出す。
本体は同じものなので、加熱のための動作をして、上総も一服している。
「何してんの?」
「ソース、見てた。」
上総がパソコン画面を見て、微妙な顔をしている。
まあ、大体、誰しもこのような反応なので、宮原も、今更驚くようなことはない。
「仕事?」
「いや。」
「好きなのね。」
「そうだな。」
「じゃ、帰るね。」
「うん。」
事が終わると上総は、帰るね、と帰っていく。
こんな関係が始まったのは…1年くらい前だろうか。
今の会社に入ったのは2年ほど前のことだ。
一般的には、システムエンジニアは、システムを作成する会社に所属するなどして、依頼された仕事を請け負う、のが普通だ。
エンジニアを抱えるような会社は余程規模の大きいところか、IT関連の会社でもない限り余り、聞かない。
けれど、請負の仕事はどうしても職場が転々とする。
ある意味エンジニアの宿命ではあるのだが、少し落ち着きたくなった。
そんな折に、この会社での求人を見つけた。
業務の内容はプログラマーの募集ではないのか、と思ったら、会社の過渡期に向けて様々なシステムを作っていきたい、やはり、システムエンジニアが必要だ、と言われ、決めた。
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