4.ファシリティマネジメント

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「私…は、本当はずっと一緒にいられたらいいなぁって、思ってた。」 「え?」 周が顔を上げる。 「その時はね。でも、ごめん、結婚してる人は、無理だよ。人から奪ったって、幸せにはなれないよ。」 「今…は?」 上総は首を横に振った。 「もう、終わったもの。それに…、気になる人がいるし。」 「タイミング、悪かったな。」 「そうね。それだけでもないけど。」 「ん…。だな。」 「バカね。」 「ホント、そうだな…。上総をすごく傷つけたよな。ごめん。」 「反省、した?」 ふふん、と笑って上総は言う。 「したした。いろいろしたよ。」 髪をかきあげて笑う彼を、今日、初めてキレイな人だな、と思った。 「なんか、周、力抜けて良くなったね。きっと、出会えるよ。周がいいなぁって思える人。」 「上総じゃ、ないの?」 「うん。私ではない。」 はふっと、大きく聞こえたため息。 「そっか…ホントに上総の中では終わっているんだな。惜しいことをした。こんなに、すげー女だったのに。」 じゃ、もう、行くね、と上総はベンチを立つ。 「うん。またな。」 「ううん。もう、会わない。」 その上総の笑顔に、茅野はじゃあな、と言って苦笑した。 上総は背を向けて、立ち去る。 終わった…んだ。 前を向こう。 そして、今、手の平の中にあるものを大事にしよう。 上総はそう思った。
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