4051人が本棚に入れています
本棚に追加
いかにも家族経営な感じのこじんまりした店。
ちょっと足のガタついた、テーブル。
座敷と言うより、和室。
しかも、少し入れ歯の緩めのおばあさんが注文を取りに現れた時点で、終わった…、と思ったし。
「宮原くん、ここは喫煙OKだから。」
同じく喫煙者の上総にそう言われ、だろうな、となる。
「え?喫煙者?なら、上総そっち行けよ。」
北本に言われて、宮原の隣に上総が座る。
「自分も吸ってたクセに。」
「だからだろ。」
おばあさんが鍋から溢れんばかりの野菜が入っているために、蓋の浮いた鍋を持ってきて、蓋、しまったら呼んで、と消える。
「引くでしょ?」
「大丈夫です。」
「嘘。私、最初はドン引きしたけど。」
「……。引きはしてないですよ。驚きましたけど。てか、あの入れ歯、大丈夫なんですかね。」
「いやー、オレもいつ、あれが鍋に投入されるかと思うと、気が気じゃないんだよ。」
北本が笑いながら、そんなことを言う。
マジか?大丈夫だろうな…。
「北本先輩、宮原くんが怯えてるから。」
佐倉が北本の袖をそっと引いている。
「大丈夫だって、オレ、この店通って10年近くなるけど、あのおばあちゃん、10年前から、ずっとあんな感じ。とりあえず、鍋ん中に入れ歯が落ちたことはないから。」
最初のコメントを投稿しよう!