2.水と星

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やむなく、今年買ってもらった小花柄のワンピースを着て、水族館に向かった。 待ち合わせは入口だったけれど、『休館日』と表示されている。 ──お休み? 入口には『水と星のコラボ』と書かれたポスターが貼ってあった。 これなのね。 とても綺麗なポスターの前で目が釘付けになっていると、 「美空ちゃん!」 と少し低くてハスキーな声が聞こえた。 くるりとそっちを見て、美空はドキンとする。 片瀬は全く変わっていなかった。 この前とは違うことと言えば、今日はジャケットを着て、片手にノートパソコンを持っていることくらいだろうか。 「片瀬先生。」 若くして、論文をいくつも発表している片瀬は少し前に准教授になった、と聞いたばかりだ。 それでも、相変わらず、ジャケットの中は黒シャツと黒のパンツなのも変わらなかった。 「先生、なんて呼ぶな。波瑠、でいいと言っただろう?」 片瀬は首を傾げて、美空の顔を覗き込む。 相変わらず、綺麗な顔だ。 久しぶりですごく照れて、ついそんな風になってしまう美空なのに、片瀬はあの時のままなのだ。 片瀬は、ふっ……、と目の色を和らげた。 「美空ちゃん、大人になったね。」 「……そ、そんなことないです。」 「敬語。今度、片瀬先生、とか言ったり、敬語を使ったら口をきかないよ。」
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