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やむなく、今年買ってもらった小花柄のワンピースを着て、水族館に向かった。
待ち合わせは入口だったけれど、『休館日』と表示されている。
──お休み?
入口には『水と星のコラボ』と書かれたポスターが貼ってあった。
これなのね。
とても綺麗なポスターの前で目が釘付けになっていると、
「美空ちゃん!」
と少し低くてハスキーな声が聞こえた。
くるりとそっちを見て、美空はドキンとする。
片瀬は全く変わっていなかった。
この前とは違うことと言えば、今日はジャケットを着て、片手にノートパソコンを持っていることくらいだろうか。
「片瀬先生。」
若くして、論文をいくつも発表している片瀬は少し前に准教授になった、と聞いたばかりだ。
それでも、相変わらず、ジャケットの中は黒シャツと黒のパンツなのも変わらなかった。
「先生、なんて呼ぶな。波瑠、でいいと言っただろう?」
片瀬は首を傾げて、美空の顔を覗き込む。
相変わらず、綺麗な顔だ。
久しぶりですごく照れて、ついそんな風になってしまう美空なのに、片瀬はあの時のままなのだ。
片瀬は、ふっ……、と目の色を和らげた。
「美空ちゃん、大人になったね。」
「……そ、そんなことないです。」
「敬語。今度、片瀬先生、とか言ったり、敬語を使ったら口をきかないよ。」
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