2.水と星

4/9
前へ
/67ページ
次へ
「え?!やだやだっ。」 あはは……と片瀬は笑う。 「嘘だよ。でもそんな風に、普通に話してよ。そんな美空ちゃんが好きなんだ。」 「波瑠さん!ポスター見たの。すごく素敵だった。」 「でしょ?美空ちゃんに見せてあげたくて。」 おいで、といつぞやのように手を繋がれて、美空はまた鼓動が大きくなるのを感じる。 けれど、きっとこの人にとっては子供の美空ちゃん、のままなのだろうなあと思うと、少しだけ、切ないような気持ちにもなったのだ。 誰もいない水族館はとてもシン……としていた。手を繋いだ片瀬はそのままどんどん奥まで進んでいく。 すると、大きな水槽の前だけザワザワと人がいるのが見えた。 「片瀬先生!準備いいですか?」 「ちょっと待って、僕がベストポジションで見る。」 美空を見て、他の人達は驚いた様子だった。 片瀬はそんなこともお構いなしだ。 「え……?その子は……」 「僕の大事な子なんだ。見せてあげたくてね。美空ちゃん、おいで。」 大水槽の前の階段状の通路の中ほどに、美空を連れていく。 ずっと、手は繋いだままだ。 ──大丈夫なの?!誤解されちゃうんじゃ……。 「いいよ。始めて。」
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4023人が本棚に入れています
本棚に追加