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「え?!やだやだっ。」
あはは……と片瀬は笑う。
「嘘だよ。でもそんな風に、普通に話してよ。そんな美空ちゃんが好きなんだ。」
「波瑠さん!ポスター見たの。すごく素敵だった。」
「でしょ?美空ちゃんに見せてあげたくて。」
おいで、といつぞやのように手を繋がれて、美空はまた鼓動が大きくなるのを感じる。
けれど、きっとこの人にとっては子供の美空ちゃん、のままなのだろうなあと思うと、少しだけ、切ないような気持ちにもなったのだ。
誰もいない水族館はとてもシン……としていた。手を繋いだ片瀬はそのままどんどん奥まで進んでいく。
すると、大きな水槽の前だけザワザワと人がいるのが見えた。
「片瀬先生!準備いいですか?」
「ちょっと待って、僕がベストポジションで見る。」
美空を見て、他の人達は驚いた様子だった。
片瀬はそんなこともお構いなしだ。
「え……?その子は……」
「僕の大事な子なんだ。見せてあげたくてね。美空ちゃん、おいで。」
大水槽の前の階段状の通路の中ほどに、美空を連れていく。
ずっと、手は繋いだままだ。
──大丈夫なの?!誤解されちゃうんじゃ……。
「いいよ。始めて。」
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