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美空の不安も全く感じていないようで、片瀬が明るく声をかけると、照明が真っ暗になり、その水槽の中に、キラキラと光が反射しているのが見えた。
『私たちが住んでいる地球、それは奇跡の星なのです……』
アナウンスと綺麗な音楽が流れて、光は形を変える。
「あれはね、銀河を角度を変えて見たものなんだよ。」
解説の邪魔にならないような低い声で、片瀬は美空の耳元で囁いた。
「綺麗……」
「地球から空を見ると、星はぺったり空に張り付いているようだけれど、実際は一つ一つがとても遠くて離れている。あれは、空をもっと立体的に表現したものなんだ。」
水にキラキラと反射する光と、その動きがとても幻想的で綺麗だった。
音と光が流れる中、その間も、片瀬はずっと美空の手を握っていてくれた。
「美空ちゃん、今日は来てくれてありがとう。」
「私も呼んでくださって、ありがとうございます。」
「連絡、くれて嬉しかったよ。」
「私の方こそ。もう、忘れているかなって思っていたから。」
「忘れないよ。」
片瀬は美空の耳元にそっと囁く。
「忘れるなんて、わけがない……。」
きゅっと握っていた手が繋ぎ直される。
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