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3.春に花咲く恋
天文学を広めるためにも観測所での観測会に協力してほしい。
片瀬波瑠は、そのように研究室の教授に言われて、星の観測会を年に何回か実施していた。
こういうところから、いずれ憧れて天文学を目指す人が出てくるのかもしれない。
全く興味のなかった人でも、少しでも興味を持ってもらえたら、という気持ちが40%、お世話になった教授へのお礼の気持ちが20%、後の30%はめんどくさい、そして残りの10%は新しい出会いへの期待。
それは別に女性が欲しいとかそういうことではなく、口コミでも広まれば、いろんなところで仕事ができるかもしれない、という期待があったからだ。
どんなことであれ、人とのつながりは大事だと、片瀬は身に染みて分かっている。
そんな中、星空の観測会を行なっているある日、中学生くらいの女の子が、観測会の最中、俯いているのを発見した。
当然のことながら、観測会は空を見る行事だ。
だから、参加している人のほとんどが顔を上にあげて、空を見上げている中、俯いているのはとても目立つ。
きっと、興味がないのだろうとは思った。
けれど、別に無理やりに興味を持たせるような趣味は、片瀬にはない。
それでも片瀬は、みんなが空を見上げている中、一人で俯いていた彼女を放っておくことができなかっただけだ。
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