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だから声をかけてみた。
2人きりで話したのは……
なんだか、俯いていた彼女の横顔が子供なのに、やけに凛としていたから。
反抗期なのかと思った彼女はそうではなく、話してみると本当に星に興味が持てなかっただけで、他に夢中になっているものがあるのだと知った。
それは『アイシング』というらしい。
片瀬は初めて見たのだが、カラフルで精巧に作られたそれは、きっと作るのには大変な作業が必要なのだろうと分かったし、綺麗で、それでいて口にしてみたいようなものだった。
──あれは、本当に美味しそうだった。
反抗期ならば接し方が難しいかもしれないが、単に興味がないだけならやむないことだ。
しかも、何ごとにも夢中になれるものがない、という子供も多い中、これに夢中になっている、と片瀬に写真まで見せてくれたのなら、特に言うことはない。
実は、片瀬はあまり食には興味がない。
割と口に入ればなんでもいい、というタイプだ。
でなければ、何ヶ月も山に籠ったりはできない。
それでも、彼女のそのクッキーは食べてみたいと思ったのだ。
お互い前を向いて話していたから、顔を向き合わせて話していたわけではなかったけれど、彼女がとても聡明であることは、話していて分かったし、話しているうち、歳の差を忘れそうになった。
片瀬はどちらかというと理数系の人間である。
そう言うと、とかく数字の中で生きているように見られがちだけれど、それでも、理数の世界にもフィーリング、というものがあるのだ。
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