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まして天文学は未知を扱う世界なので、想像を超えたことが起こることもある。
それを常識に当てはめず、どれだけ柔軟に考えることができるか、が問われる世界でもあるのだ。
どんなことも起こりうる。
その未知数の中では。
そう思っていないと、探求などできない。
だから、ではないけれど……。本来なら年の差があるはずの彼女だけれど、その年の差を感じなかった。
そして、話していて心地よかった。
型にはまっているわけでもなく、突飛すぎるわけでもなく。
柔軟で、それでいて素直。
きっと、もう二度と会うことはないと思っていた。
それでも、もしも……もしも出会うことができたら、あの時は楽しかったということくらいは言ってもいいだろう?と考えていたのだ。
……のはずなのに、気づいたら、ネックレスを渡していた。
友人が珍しい石で、片瀬に合うだろう、とわざわざ加工してくれたものだったのに。
名前を知りたい。そう思って別れる間際、彼女の名前を聞いた。
「美しい空、と書くのよ。」
そう言ってにこっと笑った彼女に願いを込めて、ネックレスをかけた。
この美しい空に、また逢えたらいい。
特に代わり映えしない日々の中、SNSを通じて、連絡があった時は驚いた。
「また、逢えたな。」
メールの向こうにいる、美しい空の名前を持つ彼女に、片瀬はそう声をかけた。
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