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そんな折に、観測会に来ていて名刺交換をした人から、『水族館で、水と星のコラボレーションをしたいのですが』と相談があったのだ。
今後、様々なそういった仕事も請けていこうと思っていた矢先である。
彼女の自宅の近くであることも、その仕事を請けた理由の一つなのだった。
だったら、とびきりいい仕事をして、彼女にまた会いたい、と思った。
そもそも、片瀬は空や研究の結果に固執することはあっても人に固執することはない。
だから、そんな風に美空のことを考えてしまうことも不思議ではあった。
それでも、水族館の入り口に立っていた彼女を見た時、この子だ、と思ったのだ。
以前に会った時よりも少し大人びていて、子供と大人の間特有のアンバランスさがなくなり、よりしっかりしたような印象だ。
「片瀬先生。」
それでも片瀬先生、なんて他人行儀に呼ぶばれると、そんな風に呼ばれたくはなくて。
そういう呼び方ではない、と教えなくてはいけないな。
片瀬はそう思った。
とてもワクワクする気持ちと、愛おしいものを守りたい気持ちと、離したくない気持ちと、いろんなものがごちゃ混ぜになって、けれど、悪くはない感情だった。
なのに、美空は敬語で話しかけてくるし。
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