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後ろから、そっと抱きしめて、彼女の香りも、感触も、全部全部忘れないようにして、覚えておこうと思って、抱きしめた。
それなのに、美空は、くるりと振り返って、片瀬を真っ直ぐに見た。
そして言ったのだ。
「波瑠さんは夢を追っていて。私はそんな波瑠さんといるから。」
「え?それって……」
「私は大人っぽくて、波瑠さんは子供みたいだから、ちょうどいいと思うの。」
この子はなんて……。
もう、言葉なんて出なかった。
「本当に美空ちゃんは、賢い……」
そうして、唇を重ねたのだ。
諦めようと思っていた気持ちだったのに、前に進んでしまった。
それは深い深い決意も込めて。
大事にする。
美空を。
そんな気持ちを込めて、キスをしたのだ。
美空は先日、波瑠が両親に挨拶に来た時に渡された鍵を使って、そのログハウスの中に入る。
それは、片瀬波瑠が住んでいる家だった。
自分のスリッパを取り出した美空は、それを履き寝室に向かう。
この時間なら波瑠はまだ眠っているはずだ。
本当は駅まで迎えに行く、と言うのを昼夜が逆転していることが多い波瑠に休んでいて欲しいから、迎えは大丈夫、と言って一人でここまで来たのだ。
それでも、寝ていても、到着したら必ず起こして、と言われている。
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