3.春に花咲く恋

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寝室は遮光カーテンがぴっちりしまっていて、真っ暗だった。 波瑠はベッドの中できゅっと布団を抱きしめて、足まで絡めて眠っている。 眠っていてすら綺麗な、波瑠の美貌に一瞬美空は見とれる。 そして、くすりとわらったのだった。 それは、いつも美空が一緒に眠る時の、波瑠の姿勢だったから。 腕の中にきゅっと美空を抱いて、全身で抱きしめるように眠る。 そうすると、とても良く眠れるらしいのだ。 「波瑠さん……。」 美空はそっと声をかける。 「ん……、美空ちゃん……?お帰り。」 「ふふ。ただいま。」 ──大学を卒業したら、美空ちゃんにお嫁にきてほしい。 そんな風に片瀬が言ったのは、二十歳の誕生日だった。 早い、なんて美空は思わなかった。 むしろ、遅かったくらいだ。 卒業までの数年だって、待てないくらいなのに。 遠距離の2人は、メールでのやりとりが多かったけれど、それでも、何かの折には片瀬は必ず美空の顔を見にきてくれたし、一緒の時間を過ごす努力をしてくれた。 もっとずっと一緒にいたい、は二人の希望だったのだ。 「じゃあ、こうしましょう。卒業したら、お嫁にもらってください。」 「約束だよ。」 「はい、約束です。」 それが二人で交わした約束。 そうして、暖かくなった春の日、風岡美空は片瀬美空になったのだ。
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