ガラスの靴を履いたら

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そんな中開かれた演奏会は、市民楽団との共演で、それはいわゆるアマオケ、と呼ばれている人たちとの共演だった。 アマオケは、普段は社会人などをしていながら、個人で練習を続けて、年に数回は大きな演奏会を開く、という活動をしている人達だ。 実力は確かにプロには及ばないのかもしれないが、そのアットホームな音楽はとてもいい、と小春は思った。 限られた時間の中で、音楽を表現することに情熱を傾けていて、楽しんでいる人達だった。 だから、小春は合同練習から積極的に参加して、意見は積極的に伝えた。 当日、コンサートは盛況で、帰り際に頂いた花を確認していたところ、とても可愛いアレンジメントが差出人不明だと判明したのである。 いつも、小春はコンサートの際のプレゼントにはお礼状を送ることにしている。 マネージャーも困った顔をしていた。 「お名前をお伺いしようと思ったんですけど、そっと置いて立ち去られてしまって。お姿は少しだけ見えました。とても綺麗な男性だったんですけど。」 男性…しかも、とても綺麗な?? まさか? 「背、高かったですか?」 「あ!高かったです。」 まさか……まさか……?? 「すごく、綺麗?」 「そうですね、俳優さんみたいに綺麗でしたね。」 もしかして、と財布の中にお守りのようにずっと入れている航の名刺を取り出して、小春はふと思い立ち、自身のスマホで検索をしてみる。
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