おかめ

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 今回の塒は東尋坊から程近い場所にある民宿である。2泊しても一万円を回らない上に海の幸の食事もそれぞれで二食も付いて来るリーズナブルさに私は大満足をしていた。問題があるとしたら県道沿いに建てられており常に何かしらのクルマの音が聞こえてくる事と戦後に建てられた木造建築なせいかボロさを感じる事ぐらいだ。日が落ちきった所で私はその旅館に到着した。 「いらっしゃいませ」  私を出迎えたのは六人家族であった。割と歳を取った老夫婦、還暦は回るか回らないかのところだろう。そして、老夫婦の息子夫婦と思しき若い夫婦。その若い夫婦の娘と思われる小学生ぐらいの女の子。この民宿のオーナーと思われる意外としっかりとした動きをする老婆。歳をとった老夫婦の母親だろうか。家族で経営する典型的なアットホームの田舎民宿そのものであった。 「じゃあ、二日間お世話になります」 「それでは、こちらお部屋の鍵となります」    老婆から鍵を渡された。仕事内容を纏めるノートパソコンとバッテリーは意外に重量がある。それ故に肩にバッグを引っ掛けているだけでずっしりときて辛いものがあるので部屋に置きに行く事にした。  部屋に荷物を置いた。畳張りの8畳間にテーブル、チェーンで繋げられた液晶テレビがある。これだけ厳重にしている事から以前に液晶テレビが盗まれた事でもあったのだろうか。液晶テレビをアメニティと思える図々しさの万分の一でもあれば多少は人生も楽しかったかもしれない。窓から外を眺めると日本海が広がっている。夜となってはただただ闇が広がっているだけで見れたものではない。備え付けの冷蔵庫からビールでも貰おうとしたら冷蔵庫のある場所の真上の壁にお面が飾ってあるのが見えた。
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