0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
みんなの視線
昨日、美容院で髪を切りすぎた。
街を歩けば、みんなが私を見ている気がする。疑心暗鬼すぎるけれど、そこらの犬や猫さえこっちを見ている気がしてならない。
あまり長い時間ではなかったけれど、椅子が合わなかったのか、妙に体も強張っている。
気に入らない長さの髪に痛む体質。おまけに周りから感じる視線。
ああもう全部嫌! 切りすぎた他人の髪なんか見て何が楽しいのよ!
『自意識過剰ね。みんなが見てるのはあなたじゃないわよ』
むしゃくしゃする気持ちを心の中で吐き出したら、どこからかそんな声が聞こえてきた。
今の、誰? というか、聞こえた内容が…。
私を見ている訳じゃない。でも確かに周りの視線は私に集まっている。
ふと気になり、そこらの店の窓ガラスに映る自分を見つめた。
当たり前だけれど自分以外映っていない。
安堵して息を吐く。その時、足元の影が目に入った。
肩に何かへばりついている。それが影に映っている。
切りすぎた髪まで人のせいにする気はないけど、もしかして体が痛いのは…むしゃくしゃした気持ちはいっぺんに消え失せた。
今心の中に渦巻いている感情は一つ。
怖い! 誰か助けて!
みんなの視線…完
最初のコメントを投稿しよう!