雲に隠れた日の光。

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 錦も笑う。少し照れた様な表情で。 「そうかもしれないね……一刀、私をいとおしんでくれてる?」  一刀の腕の中、其の顔を覗き込み微笑む錦。一刀は妙な不安を覚えつつも、錦の額へ優しい口付けを落としてやる。 「当たり前だ。心から惚れておる」  其の言葉に、錦が安心したように又微笑む。 「御免なさい。訊ねるなんて、無粋だね……でも、聞くととても安心するな……」  二本目の徳利を差し出した錦へ一刀は怪訝な表情を浮かべつつも盞を差し出す。錦がついだ酒を、一気に飲み干した一刀。再び盞を置くと、錦を心配そうに見詰めた。 「今宵は、どうしたんだ……?」 「一刀、御免なさい……」  錦は切なげな表情で、一刀の頬を包み瞳を見詰める。やはり、今宵の錦には違和感がある。そう思い錦の手を握った瞬間、一刀は体が重くなる様な感覚を覚える。途端に酷い眠気が襲ってきたのだ。額を抱え、最早閉じ掛けようとする瞼を必死で開こうとするが、視界は虚ろになってゆく。 「錦……何を……――」  途切れた言葉と共に倒れかける一刀の半身を支えた錦は、其の身をゆっくりと寝かせた。そして、御帳より引っ張り出した掛け布団を一刀の体へ。 「行って参ります。どうかお許しを……いとおしき御方」
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