230人が本棚に入れています
本棚に追加
錦の反応に、一刀は只楽しげに笑う。からかったのかと、少し拗ねた様な表情を見せる錦。
「そう怒るな。本心を語っておるのだから」
まだ耳迄赤く染まったままではあるが、取り敢えず、気を落ち着ける錦。
「明日も、忙しいんだよね……一刀は」
変わった其の話題に、一刀は表情を引き締めつつも一つ溜め息を吐いた。
「まぁな……葵殿を迎えて暫くは、気は抜けぬ。お前の時と同じ様にな」
「え……?ど、どういう事……?」
首を傾げる錦。何の気なしに一刀の予定を聞いただけだったのだが、一刀の様子を見ると何やら深刻な雰囲気だ。徐に口を開く一刀。
「お前も、此の度起きた事で悟っている筈だ……東西の、皇家の血迄を取り込む深い国交を危惧する者がいると言う事、そして其れは此処東にも言える事だ……雅殿に起きたあの一件は、俺にも余所事では無い」
「うん……」
神妙な表情の一刀より語られた言葉に、錦の表情も硬くなってしまう。
「久遠と葵殿の間に生まれる子は俺達の養子となる。つまりは、時期帝位継承の第一位となるのだ……其れを知る者は僅かだが、情報は何処からどの様に漏れるか、俺でも完全に把握するのは難しい。此の流れを、止めんとする者も現れるやも知れん」
続いたのは、葵と葵の産むだろう子の行く末を案じる言葉。未来の為に、新たな命を望む者は多くいる筈。だが、望まない者もいると言うのだろうか。
「何だか、御目出度いばかりじゃ無いんだよね……」
最初のコメントを投稿しよう!