甦るあの日。

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「は……私の方では、現在の良好な西との経済的事情、私と葵殿の婚姻と柵(しがらみ)は多く……安易に極刑を訴える事は得策では無いかと。何より今回主犯の人物は、后妃様や葵殿と無関係には御座いませぬ故」  久遠の最もな意見に、一刀も頷いた。 「其処が大きい……が、うちの保守派だな」  久遠も、複雑な表情を見せる。 「は……以前お話致しましたように、私の元へは様々な法の改正をと願い出るものが多く、今回の件で更に其の要求は強くなっておりますので。場合に寄っては引き渡し要求、此方での裁きをと」  一刀は脇息へと肘を付け額を抱える。思わず出るのは溜め息。 「確かに、其の術にも一理あるが……関係は悪化を招くな」 「ええ。身を潜めている西の保守派の反応もですな……牽制になるやもしれませぬが、火に油を注ぐ可能性も」  久遠の危惧には、一刀も同意した。今回の件は、まだ両国間の国交を深めるに法が追い付いていない為に複雑となっているのだ。しかし、此れも教訓だ。一刀は法の改正を第一に進める決心をした。 「東で起きたものならともかく、西の領地内だからな。西の帝の判断か……だが、厳粛に受け止めて頂き、其れに相応しい厳罰と保障を西の帝へは強く訴える」 「宜しくお願い致します」  久遠は、一刀の強い言葉に拝して答えたのだった。
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