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数多ある世界のひとつ。其所に存在する、広い広い大海に浮かぶそこそこ大きな島。此の島は、四季がある美しい処。元は島全体で『ひとつ』だったのだが、とある事がきっかけで国が東と西、二つに割れてしまったのだ。其れも、もうどれくらい昔の話になったろうか。付かず離れず、曖昧な関係。文化は酷似しているが、其々違う色を出していた。
在る世で、そんな両国に転機が訪れた。東を統べる帝が、西を統べる女帝へ、東西併合を推し、脅しに近い政略結婚を申し出たのだ。其の真の目的は、女帝の子。新たな高貴な血を受け継いだ子へ、東西の統治を与える事により、西を徐々に支配していくという目論見に勘付き、憤る西の女帝だが、軍事力の差に頭を悩ませていた。そんな中、己と良く似た美貌の弟が、東より届いた文の文言の隙を突き、己が妹の様に装い東へ嫁ぐ計画を表明した。此の世に罷り通る同性婚姻は此の時、西にとって唯一の活路。しかも、幼い頃より殆ど表へ姿を出さなかった弟の存在は西でさえ薄く、東には全く無いとのこと。最早此れしか、と女帝は溺愛する弟を泣く泣く東へ差し出した。して、まんまと此の茶番の様な西の罠に嵌まった東の帝は、己の直筆、血判入りの婚姻証書を国民の目の前で西へ渡してしまう。初夜で西の皇子より明かされた己のしくじり。最早何とも成らず、当初は状況を憂え、考えあぐね后妃としてしまった西の皇子の崩御を企むも、純真無垢で健気な皇子に何時しか心を奪われてしまった東の帝は、名実共に皇子を后妃として迎え入れたのだった。更に側室をも不要とした東の帝は、嘗て帝位争いを繰り広げた従兄弟と、新たに西より迎える姫の子を帝位継承の一位とする事を表明したのだ。
そんな歴史的一歩を踏み出した両国。互いの民の行き来は勿論、教育等も互いの国への理解の為に歩み寄りがあった程。とは言え、ひとつになるにはまだ遠い。両国民の、互いへの誤解も多く残ったまま。両国共通で保守的な者は、当然相手を受け入れられずにいたのだから。
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