遠退いた春。

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 外より耳へ届く刀を交える金属音、何方の誰の声か、時折唸る声も聞こえる。 「積み荷か」  静かに呟く一刀。 「恐らく」  久遠も冷静に答えた。 「西も、治安の見直しが必要ですな。帝は此方で、私も外へ」  刀を携え、腰を上げた久遠の肩を掴んだ一刀。 「お前に何かあれば全てが無駄になる」  同じく刀を携えた一刀の先の行動が見えた久遠は動揺を見せた。 「何をなさるおつもりか!其れは此方の台詞ですぞ!って、ちょっ、帝!」  久遠の説教途中で屋形を出た一刀。気が付いた陽炎と白夜が一刀の側へと焦るが、敵が中々隙を与えない。と、突如一刀へ向け小刀が飛んできた。其れを弾いた一刀の背後より感じた、強い殺気。 「東の帝か」  低い声だが、まだ若い。 「何者だ」  静かに訊ねる一刀。しかし。 「お命頂戴!」  斬りかかる其の気配に、一刀は振り向くと同時に刀を振るう。相手の刀が弾かれ、間を置かぬ次の太刀が敵の肩から胸を斬り付けた。 「くっ……!」  敵の刀が地に落ちた。後退り、血の滲む肩へ手をやる姿。一刀は、其の敵の首へ刀の切っ先を触れる程に突き付けた。 「誰の命で動いておる……答えよ、斬るぞ」  目の前の刃よりも、不気味な程冷たく感情の無い其の表情と声に、敵は動けず身震いを覚えた。其の一瞬、一刀の死角より来た別の敵の気配。 「帝!」  側で、他の敵を相手にしていた久遠が気が付き咄嗟に一刀の背後へ庇う様に身を置いたのだ。久遠の背に、一刀を狙った敵の一太刀が入る。 「久遠?!」  久遠へ太刀をくらわせた敵は、少々焦る様な表情を見せた。 「おのれ……引くぞ!」  他へ告げる声に、数名の者が引き上げる姿。傷を負った者も遅れながら続くが、東の護衛達も追える程体力が残る者も少ない。あまりの奇襲に不意をつかれ、劣勢も強いられたのだ。何より、此処は西の國。罠である可能性を考えると、少数で乗り込むのは自殺行為である。陽炎と白夜が、倒れた久遠を抱く一刀の元へ駆け寄る。 「帝!久遠様!」
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