風は歌を奏で

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「そもそも、自分の娘の顔を『醜い』なんて言う母親はいない。だってそれは自分の顔も『醜い』って言っているようなものだからね。遺伝子パワーを舐めたらいけない、アレ、どれだけ手を加えようと思っても常に私達の上にいるんだから」 「あ、えっと……じゃあ」  その言葉の意味は分からない――けれど。 「私は、風音の顔が大好き。例え片目が無くても、片耳が無くても、顔に傷があっても――私は、風音の顔が好きだよ」 「ッ……」 『大好き』――そんな言葉を言われたことは、今まで一度もない。  実の母でさえ、そんな言葉を私には言わなかったのだから。  お金と引き換えに、実の娘を“殺しても構わない場所”に送ったのだから。  だから……思わず私は―― 「え、ちょ!? 風音、どっか痛いの!? 病院行く!?」 「いえ……大丈夫、です……」 「でも急に涙が出るなんてよっぽどのことじゃない! 今すぐに病院へ……って、チクショウ! まだ病院開いてないじゃん!」
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