風は歌を奏で

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 ……はずだった。  でも私は――“もしかしたら”と。  もしかしたら、きっと。  私はこれ以上苦しまなくてもいいのではないか、と。  望まれずこの世に生まれた私を、心の底から望んでくれる人がいるのではないか、と。  そう……思ったからか。  私は――――、 「おーい、何ボーっとしてんの?」  ――ふと、急に耳に入ったその声に、私の意識は戻った。 「サッサと布団から出てこないと、“お母さん”――その布団を回収しちゃうぞ? それでも良いのかなぁ?」  ……ああ、そうだった。  私はもう、あの地獄にはいないのだと。  私を包み込んでいる布団――その布団をポンポン、と叩いて私に笑顔を見せるその人。  その人が――私をあの地獄から救ってくれた人。  その人が――今の私の“新しい母親”だ。
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