風は歌を奏で

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 あの時、『生きたい』――そう答えた私は。  目の前にいる女性の“娘”になった……らしい。  この人に救われ、この人の娘として新しくこの世界で自由に生きることを許された私だけど。  その実感だけは……まだ全然湧いてこない。  もう既に一か月が過ぎようとしているのに。 「――返事がない、ということは“肯定”とみなし、この布団を回収~ッ!」  いつまでもぼうっとしていた私――寝起きだからだろうか。  返事をしなかった私が被っていた掛け布団は、その人の手によって強引に回収されてしまった。  あの地獄では常に行われていたその行為……でも。  今は――そんなに嫌じゃない。 「ん? 何かいい夢でも見ていたの?」 「あ、いえ……そういうわけじゃあ――」 「固い、固すぎる! そんな他人行儀な言葉遣い、お母さんに使うことを許した覚えはない!」 「で、でも……」 「デモデモダッテじゃない! 私達はもう“家族”――母と娘なんだから! そんな堅っ苦しい関係の家族になる為に、私は『風音(かざね)』を娘にしたんじゃない! この親不孝者……って、もしかして、これが俗にいう反抗期って奴!?」
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