風は歌を奏で

6/12
前へ
/25ページ
次へ
「反抗期専門の病院ってあったっけ……いやいやそんなの聞いたことないし、でも私が知らないだけで実はありましたー、なんてことがないとも言い切れないし……う~ん……」 「――あのぉ」  悩み続けている風歌さんに、私は声をかける。 「こういう時、今の若者だったら即座にスマホで検索するんだろうけど、私……あれ苦手だしなぁ……でも我が娘の為と思えば、例え火の中でも――」 「……おかあ、さん?」 「はいどうしたのお母さんはここにいるよ何か用かな!? いや用が無くてもお母さんは風音の傍にいるけどね!」 『お母さん』――と呼んでみたら別人のように切り替わるその速度。  ……思わず絶句してしまう。  そう――これが私の新しい母親の風歌さんだ。  私という“娘”が出来たことで未だに大喜びしている“母親”の姿だ。  世間の『母親』とはこういう感じなのか、とふと思ってしまう……けど。  それでも――以前の母親に比べれば、とても優しく、暖かい。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加