風は歌を奏で

9/12
前へ
/25ページ
次へ
「か~ざ~ねッ!」  背後から風歌さんの声が聞こえたのと同時に。  後ろから現れた二つの手が私の顔をもみくちゃにする。 「なに、自分の綺麗な顔に見惚れていたの? まあ、確かに風音は美人さんだから、風音自身でも惚れるのは分からないでもないけどね。お母さんだって風音の顔に惚れているんだから。こんな美人さんが私の娘ってことに、未だに喜びを抑えきれないもの」 「それは……私の顔が“醜いから”ですか……?」 「え、誰がそう言ったの?」 「風歌さんは……口ではそう言っても、心の中じゃあ私の顔を醜いと――」 「思っていない」 「……え?」  予想外の答えに、私は驚く。 「私がいつ、どこで、風音の顔を『醜い』なんて言った?」  眼を鋭くした風歌さんは私の顔に自分の顔を近づけてきた。  それも物凄く……近い。鼻とおでこが当たっているほどに。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加