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姥捨 3 D44駅
「冷蔵庫にサラダ、鍋にシチューあるから」
返事なし。
「聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる」
邪魔くさい感じの声で中2・小5の姉弟が
答えるのを見るけど、
二人はスマホから目を顔を逸らさない。
「こっち・・・」
言いかけて止めた、無駄やから。
「あ、時間やわ」
慌てて玄関のドアを開けると、
「今から出るんか?気をつけて行けよ。
お母さんによろしく」
コンビニ帰りの夫がぼそぼそ言った。
「うん、明日の夕方には帰るわ」
片手をあげて階段を降りた。
地下鉄を乗り継いで名駅、
そこから近鉄線ーガタンゴトンー乗り換え、
バタバタ・・・バタバタ・・・
「ふう、やっとやなあ・・・」
誰ぁれも居てないホームのベンチ、
座り込んでしもた。
花の時期以外訪れる人も少ない寺のある駅、
ここが私の故郷。
「時間、とまってるんちゃうか・・・」
自分まで壊れた時計みたいに停止・・・
1月半ば、やっとの帰省、しかも一人。
「お母ちゃん、待ってるわ、急ごう」
道には自分の足音しかなかった。
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