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十二月の肌寒い某日の早朝、それは起きた。
小説家、三咲花汰(ミサキハナタ)──本名、日向平介(ヒムカイヘースケ)の自宅で住み込みの家政夫兼恋人をやっている橘司郎(タチバナシロー)は目覚めた。
時計の針は五時半を差している。
しかし彼は枕元に何かを探るよう手を動かしている。
いつもある眼鏡がないと気づいた時、薄らと目を開けた。
「……あ?」
寝起きだろうと悪い視力は世界をぼんやりとさせる。
しかし眼鏡がなくとも見える視界にまだ夢かと思わせたが、意識がはっきりした彼はうつ伏せの恰好から飛び起きた。
ここは見慣れない部屋だったからである。
眼鏡の変わりにあったスマホを取り、何も起動させていない真っ黒な画面に映った自分を見て、顔を触る。
「…………何の薄い本ですか」
そうこれは、奇怪な二十四時間の悪戯の始まりだった。
または壁の祈りとも言う。
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