こんなこともあろうかと

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 差し出した五京面相の手を、マリーはぴしゃりと叩き返した。 「どういうつもりた?」 「お前は師匠じゃない。仮にそうだとしても、もう師匠だとは思わない」 「何?」 「師匠はこういった。怪盗は生き様でありプライド。こうあるべしという確固たる信念を持ち、決して阿る事無く生きよ、と。確かに諦めるなとは言った。だが、それはいざとなったら阿ってでも生き延びよという事では断固ない!! 最後まで生き様を貫くことを諦めるな、と言ったのよ」  マリーはひときわ強く、目の前にいる男を睨み付けた。  その正体が高円寺団五郎だろうが五京面相だろうがこの際どうでもいい。  彼女を支える教えを覆そうとする敵に過ぎなかった。 「確かに今の私はピンチよ。自らの正体を知られ、そして師匠に歯向かおうとしているかもしれない。けど、それで自らの生き方を覆すほど私は出来た大人じゃないの。悪かったわね」 「……どうしてもか?」 「ええ、どうしても。貴方流に言うならそうね、こんなこともあろうかと実際アジトには爆薬を仕掛けてあるわ。筋書き通り、アジトは爆破してあげる。最も、私は本当に死ぬけどね」     
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