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「諦めるなっ!!」
突然響いたのは、懐かしい師匠、怪盗五京面相の声だった。
「え? この声は……」
声のした方向にいるのは、高円寺団五郎ただ一人。彼はニヤリと不敵に笑うと、その顔に手をかけた。
べりべりべり……。
高円寺団五郎の顔の下から現れたのは、金髪でニヒルな笑みを浮かべた顔。若いのか年老いているのか。あるいは男か女かも見ただけでは測りかねる様な顔だったが、間違いなく美しかった。
「久し振りだな……。マリー」
「し……師匠」
その顔はまさしく、かつて彼女に怪盗のイロハを叩き込んだ者の顔だった。
「その通り。名探偵高円寺団五郎は、五京ある俺の顔の一つというわけだ」
「なぜ……?」
「こんなこともあろうかと、お前を弟子にした日から温めてきた計画だ」
「どういう……」
「お前はもう、散々暗い道を歩んだ。そうだろう? だから、いつかは日の下に帰してやりてえ。弟子にした時からそう思っていたのさ」
高円寺団五郎改め怪盗五京面相は少し優し気に微笑んで見せた。
マリーは何も言わない。
「俺の全てを受け継ぎ、そして独り立ちした後は自ら様々な手法を編み出してここまで来た。そうだろう?」
「……はい」
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