こんなこともあろうかと

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「お前さんは今や怪盗業におけるノウハウの宝庫だ。それは一つの立派な財産だよ。わかるな?」 「はい」 「そのノウハウがあるって事は、それを防ぐ手立てもあるってことだよな。つまり、どんな怪盗相手でも先回りができると思わないか?」 「確かに……でも今更……」 「大丈夫だ。こんなこともあろうかと、準備は整えてある」 「え?」  五京面相は、懐からビニル袋に入った一通の封書を取り出した。 「こんなこともあろうかと防水は万全だ」  そう言いながらそれを取り出し、マリーに差し出す。  彼女はためらいで指を震わせながら、差し出された封筒を受け取り、中身を取り出した。  便せんの一行目には「名探偵高円寺万理華(こうえんじまりか)登場!!」と書かれていた。 「こ、これは?」 「筋書きはこうだ。まず、女怪盗マリーは捕まって恥をさらすよりは、とアジトにあらかじめ仕掛けておいた爆弾で爆死。高円寺団五郎もそれに巻き込まれる。一方、叔父である団五郎を追って上京してきた万理華……お前だな……は到着するや否や叔父の訃報を聞かされるわけだ。だが、叔父の遺志を継いで、万理華もまた名探偵として世の悪と戦う事を決意する」 「……姪?」 「心配するな。こんなこともあろうかと、姪の存在を匂わせる様な事は各所で言ってある」     
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