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こんなこともあろうかと
女怪盗マリー。
世間を騒がせる大怪盗である。
今日も彼女は無事に仕事を終えてアジトである小島に戻ってきた。
単独での犯行を旨とする彼女は手下など使わない。島までのクルーザーも自分で運転してきた。
全て師匠である怪盗五京面相から受け継いだ教えだ。
五京面相は全ての怪盗の頂点に立つとまで言わしめた存在だ。彼は五京の顔を持つと言われる変装の達人だった。マリー自身、本当の顔を見た事はない。従って彼かどうかも定かではないが、彼女の前では少なくとも彼だった。
ともかく、その怪盗五京面相の教えは彼女にとって絶対だった。
「ふふ。到着……と」
彼女は桟橋へと降りた。
桟橋を歩きながら、彼女は今回の獲物である宝石を懐から取り出した。大粒のダイヤモンドだ。さる富豪が非合法な手段で手に入れたものを頂いた。持っていること自体秘密のはずだから、警察に知られることはないだろう。
例の名探偵も来ていたが、今回ばかりは出し抜いてやった。
「アハハ、いい気味だわ」
高ぶる気持ちを抑えられず、彼女は宝石を高く掲げて笑い声をあげた。だが、その次の瞬間、高く掲げた今回の獲物に果てしない違和感を覚えた。
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