第一幕 偽竜来臨

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 この屋敷の奇怪な西洋建築もだいぶ見慣れて、数か月。掃除や洗濯、使用人としての仕事は難なくこなせるようになったが、旧家に仕える者としての立ち振る舞いは今一つ掴めない。何せこの屋敷は人の出入りが多かった。志月が主に管理を任される別棟は、主に客間兼客人の寝泊まりする寝室となっているが、未だに家の者と客人の区別がつかないことが多い。最も単純な見分方としては、この家に関係する男は師水を含め皆、長い髪を垂らしていること。  長い髪に端正に整った美貌。それが男女を問わずこの一族に属する者の証だ。美貌を除けば、志月も例外ではないのだった。  廊下を歩く志月の足元を、ちょこちょこと必死に歩く影がある。小さな子犬のようだが、全体を覆う真っ白い毛には紅色が混じり、額に角が二本生えている。 「しろ、影の中に隠れて。お客様に見つかったら大変です」 「問題ない。わしの姿が見える客人など限られておるじゃろ。人の香がすれば言わずとも消えるぞ。それよりこの屋敷は本に面妖な作りになったのう。昔はもっと古ぼけておったが居心地がよかったのじゃぞ」     
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