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窓辺に追い詰められた志月は硬直し、少しばかり身体を強張らせる。金の混じった瞳は志月を射抜いて逃さない。
「貴様、本当にこの家の血を引いているのか」
「……ほんのわずか、ですが、たしかに」
顔が近い。思いのほか長いまつげや、通った鼻筋がぶつかりそうなほど。
「しかし、何の力も感じられん。陽司の下にいながら、お前は五葉にはなれなかったようだな」
「はい。私では、皆さまの、兄弟の役に立つことができませんでした故。このような形でささやかながら、お手伝いさせていただいている次第です」
志月は妖を葬り去る力――五葉業と呼ばれる力が、花開かなかった。郷では年に一度、神の眠るとされる真口神社の小さな祠の前で祈りを捧げ、神より『華紋』という紋章を授かる。どんなに遅くとも十三、十四の年になれば発現するはずの紋章が、志月には浮かび上がらなかった。七つまでに業を手にした者は稀代の神の子とされ重宝されるのだが、現在の筆頭集は皆が皆七つまでに業を得た天才の集団だった。ここ数百年でも、これだけの数の発現は例にないのだというから驚きだ。
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