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不愛想に菓子
それから5日ほど経った。
志月自身が警戒しているのが功を成してか、劉がいかがわしいことをしてくる気配はない。もっとも、近づこうとするとすぐさま逃げる志月を愉快そうに眺めているのが腹立たしくはあったが。
「失礼いたします、劉様。届けられた書類をお持ちいたしました」
「ああ、その辺りへ置いておいてくれ」
仕事机に腰かけた劉に指し示されたのは、既にいくつもの書類が散乱した対面式ソファの間にあるテーブルである。志月は指示通り、そこに茶色い縦長の封筒を三つ積み上げた。
劉はこの家にも仕事のために来ているという。二日に一度ほどの頻度で部下らしき男性が車でやって来ては、仕事に関する書類であろうものを渡すよう指示して去っていく。仕事がらみのものであるならばもっと警戒すべきではないのかと思うが、尋常小学校を出た志月でも、たいがいは難しい言い回しで書いてあったり、そもそもエゲレス辺りの文字で書いてあるらしく、志月には全く読めない。
一体この男はどんな仕事をしているのか気になるところだが、なかなか聞けずにいるのだった。
「……ん? おい娘。その手に持っている包みは何だ」
志月はしまった、と目を剥いた。その手には紙袋が抱えられている。
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