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第一幕 偽竜来臨
一人の少女が、西洋づくりの長い廊下をよたよたと歩いている。使用人用にあつらえられた丈の長いしっかりとした生地のメイド服で小さな体を包み、長い髪を高く結い上げて、憂いを帯びた深海の色の瞳が少し先の地面を見下ろしている。その両手に抱えられているのは大量の薪だ。
志月がこの屋敷へ奉公に上がり、一か月が経過した。ここは大御郷の中央部に位置する大賀美本家。この土地に暮らす人々の本家本元にあたり核となる家である。志月は十数年もの間、通いでこの地に蕾として足を運んだ。彼女にとってこの土地に住まうことができるというのは、二十年近い人生の中で一番の喜びといっても過言ではなかった。
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