彼女

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 中学生の頃に付き合った彼氏がいい人だった。  可愛いカフェやおしゃれな喫茶店に連れて行ってくれた。君はこういうのが好きだと思って調べたんだと紅茶を飲む彼が素敵だと思った。彼は私と会うたびにプレゼント贈ってくれて、褒め称え優しくロマンチックに接してくれた。  そのおかげで私はいつしか彼に見合うようにと気負うようになっていた。これではいけないのではないかと思い、彼にラーメンを食べに行こうと誘った。彼は君には似合わない。可愛くておしゃれな君にそんなものと言った。ずきりと痛む胸をよそにありがとうとお礼を言ってイタリアン料理の店に行った。  お兄ちゃんが私に言う。お金持ちの彼氏見つけるなんてやるなぁ。さすがだな。  分厚いメガネにほったらかしの髪の毛。お兄ちゃんは私を認めてくれてる。  洋服が好き。お化粧も好き。アクセサリーやヘアアレンジだって。でもそれは、男の人に認められたいからじゃない。彼に好かれたいからじゃない。私の好きなようにしたい。  受験で忙しくなるからと彼とは別れた。別れたくないと言われたが最終的には別れた。  お兄ちゃんはコンタクトにして髪の毛を染めた。  私は高校生になった。恋人ができた。不精な見た目でスマートな振る舞いのできない人だ。でも私がラーメンを食べに行こうと誘えばいいな、行こうと言ってくれる人だ。新しくできたカフェに行こうといってもきてくれる。こんなに振り回されて嫌じゃないのかと聞くと、一緒に居られるなら何処でも、と答えてくれた。これが私の選んだ人。私の好きになった人。そう思うとまた少し自分のことが好きになれた。  
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