3人が本棚に入れています
本棚に追加
ただいま時計は、22時56分23秒を示しております。
ある森の中に静かに佇む廃館の壁には、奇妙な時計が掛かっています。
どこにでもありそうなその丸型の時計は、見るところ秒針、分針ともに動いておりません。
この時計は昔の館の主が作ったものですが、主は奇妙な時計を作ることで有名でした。
この時計も見た感じは普通ですが、実は秘密があります。
秒針、分針、時針は肉眼で見ても動きが全く見えません。なぜなら、秒針が6度(1秒)動くのに必要な時間は、6時間に設計されているからです。
この時計が動き始めたのが0時ですから、ざっと計算しますと約56.5年前に作られたと考えられます。あとは……いえ、これは必要のないことです。
さて、話をしていたため気付きませんでしたが、今1人の女性が館内に入ってきました。
長ズボンに長袖、暖かそうなジャンパーを着て、大きなリュックを背負っています。
すると、彼女が呟きました。
「はぁーあー山岳部のみんなと離れるなんて……。こんな山奥に明かりがついてる所があって良かったよ。それにしてもここって何なのかしら」
リュックから無造作に何やら取り出します。
「スマホスマホ~っと。
げっ、もう0時過ぎてんじゃん! ん、なにあの時計……」
彼女は時計に近づくと、壁から外して裏で時刻を合わせ始めました。
「ずれてるの見ると、つい合わせたくなっちゃうのよねー」
彼女は時計を直します。
言わなくてもいいと思っていましたが、言った方がいいようです。
その時計、動かし始めてから2周回りますと中の歯車が回るんです。
だいたい半径1キロメートルほどでしょうか。時計の中の装置が起動して、爆発するんですよ。
彼女は時計を直しました。
最初のコメントを投稿しよう!