時計

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ただいま時計は、22時56分23秒を示しております。 ある森の中に静かに佇む廃館の壁には、奇妙な時計が掛かっています。 どこにでもありそうなその丸型の時計は、見るところ秒針、分針ともに動いておりません。 この時計は昔の館の主が作ったものですが、主は奇妙な時計を作ることで有名でした。 この時計も見た感じは普通ですが、実は秘密があります。 秒針、分針、時針は肉眼で見ても動きが全く見えません。なぜなら、秒針が6度(1秒)動くのに必要な時間は、6時間に設計されているからです。 この時計が動き始めたのが0時ですから、ざっと計算しますと約56.5年前に作られたと考えられます。あとは……いえ、これは必要のないことです。 さて、話をしていたため気付きませんでしたが、今1人の女性が館内に入ってきました。 長ズボンに長袖、暖かそうなジャンパーを着て、大きなリュックを背負っています。 すると、彼女が呟きました。 「はぁーあー山岳部のみんなと離れるなんて……。こんな山奥に明かりがついてる所があって良かったよ。それにしてもここって何なのかしら」 リュックから無造作に何やら取り出します。 「スマホスマホ~っと。 げっ、もう0時過ぎてんじゃん! ん、なにあの時計……」 彼女は時計に近づくと、壁から外して裏で時刻を合わせ始めました。 「ずれてるの見ると、つい合わせたくなっちゃうのよねー」 彼女は時計を直します。 言わなくてもいいと思っていましたが、言った方がいいようです。 その時計、動かし始めてから2周回りますと中の歯車が回るんです。 だいたい半径1キロメートルほどでしょうか。時計の中の装置が起動して、爆発するんですよ。 彼女は時計を直しました。
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