小説家さんとバンドマンくんたちの住む家

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「そう、言われましてもストーリーを書くのとポエムを書くのでは全く別の技術ですし、私にやらせるのは全くの素人にやらせるのと変わらないと思っていただきたいんですが」 「ひとりでやらなくても、一緒にやろう?」 「え、うぅん」  やりたくないという訳ではない。でもそんなことをするのなら、作曲についても知ってからにしたいし何年か勉強をさせてもらいたいのだけれど。 「フミさん」  悩んでいると菜奈村さんの声が聞こえて台所のほうを向くとそこにはバツの悪そうな彼の姿がある。 「任せとけって言っておいて悪いんだが、レンジに入ってるの何?グラタン?」 「あぁ、ラザニアです」  そう答えながら立ち上がると彼が知ったかぶりをしている様子で 「あぁ、らざにあね」  と言ってから 「って何?」  と問いかけてくる。 「麺が切れてないミートスパゲティ、ですかね。具と麺が交互に重なっているんです」 「あぁ、そういやそんな料理もあったっけな。食ったことねぇけど」 「やっぱり私もそちらに行きます。ふたりで準備をしたほうが早く夕食にできるでしょうし」  あまり家でつくるものでは無いし、菜奈村さんを戸惑わせてしまったかな。と思いながら立ち上がるとなぜか隣に座っていた大河さんも立ち上がる。 「クロ先輩は火傷されたら困るから待ってて」  彼はそう言うと私より先に台所に向かい、 「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」  と私も黒澤さんのほうに視線を向けると彼は宣言していた通り、私の前でもパンツ一枚だった。
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