小説家さんとバンドマンくんたちの住む家

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 ふあぁ、とあくびをしながら時間を確認するために手探りでスマホを探すが、いくら枕の横で手を動かしても手に感じるのは柔らかい感触ばかりでそれらしいものが無い。  あれ?何でスマホが無いんだ?  眠いせいでいつもの半分ほどしか開いていない目でベットの上を見回してようやくここがひとり暮らしをしている自分の部屋では無いことを思い出す。  い、今何時だ?  慌てて体を起こして隣に視線を向けるが眠り始めたときはそこにいたはずの大河さんの姿はそこに無いし、自分の格好を確認すると着ている服が私服からスウェットに変わっている。  自分で着替えては、無いよな。  体にかかっている毛布をどかしてシーツを確認するとそれも昨晩かかっていたものとは違うものになっていた。  大河さんがやっておいてくれたんだろうな。  まさか着替えが必要な事態になるなんてなぁと思いながらベットから降りて自分の鞄から持ってきた服を取り出し、それに着替えて蔵を出る。  昨日は騒ぎを起こさずに済んだけれど、父と会うのは気まずいし庭にいてくれたらいいんだけどなぁ。と周囲を見回しながら家の玄関に向かうがそこに人の姿は無く、誰とも会うことなく扉の前に着いてしまう。  そういえば大河さんはここにいる人が全員寝静まってからうちに来たから、彼がいることにみんな驚いただろうなぁ。  玄関の扉を開ける音を聞きながら母さんと大河さんが顔を合わせた場面を想像して彼は自分のことを何と紹介したんだろう。とふと不安になる。  いくら彼でもフミさんの恋人だ。なんて言ってないよな。  靴を脱いで廊下に上がると工場のほうから母の笑い声が聞こえてきて、早足でそちらに向かう。 「あ、兄さんおはよう」  扉を開けるとすぐに弟の声が聞こえてきて、それにおはようと挨拶を返しながらスリッパを履いて工場に入る。
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