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「これがチューニングするやつで、こっちが音を変えるときに踏むので、こっちが弦にくっつけるやつで、あっちに置いてあるのが音を大きくするやつ」
「ま、待ってください。一気に言われても何が何やら」
のんびり一個一個見ていこうと思っていると次々説明をされてしまって慌てて視線を動かして言ってからひとつ目のものに視線を戻す。
「ギターって奥が深いんですね。音楽を聴いているだけではこんなにたくさんのものが使われているなんて分かりませんでしたよ」
そう言いながらどう使うんだろう?と弦にくっつけるやつ。と言われた妙な形をしたプラスチックを手に取ってぐるぐると回していると彼が私の前に手を出す。
「あぁ、お願いします」
持っていたものを手渡すと大河さんはまずはそのままギターを鳴らし、私のほうにちらりと視線を向けると持っていたそれを弦を挟むようにつけるともう一度ギターを鳴らす。
「それが弦を押さえているから、音が変わるということですか?」
「そう」
大河さんは頷くと取り付けたそれを外してテーブルに戻すと
「フミさん、音の違いは分かるんだね。ほっとした」
と言った。
「え、いや、確かにギターは全然弾けていなかったかもしれませんけどそれくらいは分かりますよ」
でもそう思われるほど酷かったのか。と少しショックを受けながら言うと彼は自分が酷いことを言ってしまったと思ったらしくごめん。と短く謝ってギターを壁に立てかけると腕が触れるんじゃないかというほど近い距離に座り直した。
「じゃあ寝るまで話しよう?」
「そうですね」
私が同意すると大河さんが私の手に自分の手を重ねたりするものだから、そういうことに免疫の無い私は肩がびく、と跳ねてしまった。
「そ、それにしても、きっと普段から本を読む方では無いんだろうなと思ってはいたんですけれど。見事に音楽一色ですね」
自分が女の子のような反応をしてしまったのが恥ずかしくて、それを誤魔化すように部屋を見回しながらそう口にする。
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