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「兄さんこのまま一生独り身なんじゃないかって思ってたから」
確かに実家に住んでいたころも色恋とは無縁だったからそういう心配をされても仕方がないし、自分でもそうなるんじゃないかとは思っていたけれど。
「それに、まだ理央と同い年の若い子がこんなに覚悟決めてるのよ。私だって最初はそんなのダメよって反対したけど、あんなことを言われちゃもう何も言えないじゃない」
「何かドラマのワンシーンみたいだったから息子がもし同性の婚約者を連れてきたら?っていうドッキリかと思った」
「そうよねぇ。私も思わず部屋の中見回しちゃったわ」
弟の言葉に反論できず黙っているとふたりが自分をそっちのけで盛り上がり、ふふふと笑う。
ドラマみたいなこと?大河さんが?
私の中で彼は無邪気で子どもっぽいという印象が強かったのでそう言われてもイメージが沸かなくて、想像しやすいように未だに手の中の餅を捏ねくり回している大河さんに視線を向けるが頬を粉まみれにしている姿じゃどうしても
フミさん大福つくったよ!
というセリフを言っている姿しか浮かばない。
「フミさん、大福できた」
どんなことを言ったんだろうと不思議に思いながら真剣な横顔を眺めていると彼がそう言ってこちらに視線を向ける。
「よくがんばりましたね」
私が大河さんの姿を眺めている間もふたりだけで盛り上がっていた弟と母は放っておいて、彼の隣に立って手に持っている大福のようなものに視線を向ける。
弟が幼いころに作ったやつも、こんな感じだったなぁ。餅の厚さは均一じゃなくてあんこが飛び出てて。
「ではそれはお土産として持ち帰りましょうか」
懐かしい気持ちになりながら商品を入れるビニールパックを取り出し、大河さんの前に置くと彼が手に持っていた大福をその中に入れる。
「それにしても、ずいぶん派手にやりましたね」
ポケットからハンカチを取り出すと大河さんがこちらを向いて、その頬についた餅の打ち粉を丁寧に拭う。
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