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番外編 小説家さんとバンドマンくんのギター
「あれ、大河さん、この指の位置ってここであってましたっけ?」
すんなり手本を見せてくれた彼と違って私は指がつりそうになりながら弦を押さえ、ぷるぷると指を震わせながらも何とかその状態を維持して問いかけると
「ちょっとずれてる」
と言われて小指をぐい、とずらされる。
「いてて、ちょ、ちょっと待って」
「その状態で、ジャーンね」
そう言いながら弦をかき鳴らす動作をされ、右手に持ったピックをおそるおそる弦に当てるが
「ずれてる」
と言われて今度は薬指を掴まれてぐいとずらしながら曲げられる。
「痛い、痛いです!」
これは本当に指が折れるとギターから手を離して手をぶんぶんと振ると大河さんはそれを見て不思議そうに首を傾げる。
「パソコンのキーボード、あんなに滑らかに叩いてるのに」
「それとこれじゃあ手の使い方が全く違うじゃないですか」
「そう?」
「そうですよ。もう、指が折れるかと思いました」
そう言いいながら左手を見つめ、こんなにうまくいかないものとはなぁ。と思いながら大河さんに視線を向ける。
「これだと、各音階の音を出せるようになるまででもかなりの練習が必要そうですね」
これは初心者にしても酷すぎるんじゃないかと心配になって意見を求めると歯に衣を着せるということをしない大河さんは
「そうだね」
と頷き
「誰でも弾き続ければいつかはできる」
と励ましているのかいないのかよく分からないことを言った。
「そう、ですね。人はいつか死ぬということを考慮しなければ時間をかけて何でも出来るようになると言いますし」
「それは、前向きな言葉?後ろ向きな言葉?」
「皮肉ですよ」
彼は純粋だからそういうことが通じないんだろうなぁと思いながら言葉を返すと案の定彼は意味が分からないといった様子で
「ひにく」
と言葉を繰り返した。
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